アーケード版『バーチャファイター3』革新の3D格闘と高低差バトルの魅力

アーケード版『バーチャファイター3』は、1996年9月にセガ・エンタープライゼスから発売された、セガ・AM2研(後のセガ第二研究開発本部)が開発した3D対戦型格闘ゲームです。当時の最新3DCGアーケード基板「MODEL 3」を採用し、リアルなグラフィック表現、動く筋肉や視線を追うキャラクター、階段や斜面など高低差のあるステージや軸移動(エスケープ動作)などを特徴とする意欲作でした。

開発背景や技術的な挑戦

アーケード版『バーチャファイター3』は、セガ・AM2研を率いた鈴木裕が開発を統括し、MODEL 3基板の技術力を最大限に活用した挑戦的な作品です。MODEL 3は航空・宇宙産業用グラフィック技術をもとに開発された高度な性能を持ち、キャラクターの筋肉や目の動き、反射する金属質なボディの表現を可能にしました。ステージに高低差を取り入れてダメージ量に変化を与え、戦略性を高めた点も革新的でした。さらに、従来の平面回避にとどまらず、エスケープ動作により軸移動が可能になったことで、戦術の幅が広がりました。

プレイ体験

プレイヤーは、滑らかなモーションと精緻なグラフィックに圧倒され、戦場ともいえるステージの高低差を活かした攻防を体験しました。斜面や階段、揺れる筏など、ステージ自体が戦略の一部となっており、視覚的な演出だけでなく戦術的な奥深さももたらされました。また、エスケープによる軸移動により、相手の攻撃をかわしながら反撃する立体的なバトルが可能となり、新しい格闘アクションを味わえました。

初期の評価と現在の再評価

リリース当初、『バーチャファイター3』はMODEL 3の圧倒的な描画力と高度な演出が評価され、ミニ世界で「最も驚異的なビデオゲームのグラフィック」と称されました。日本では1996年のアーケードゲームとして4位の稼働実績を記録し、1997年には国内で最も稼働収益を上げたタイトルとなりました。全世界で3万台以上の筐体が設置されたこともあり、シリーズとしても成功を収めました。その一方で、新システムに対応できず離れていったプレイヤーもいたとされ、賛否の両面を生みました。

他ジャンル・文化への影響

『バーチャファイター3』は、3D格闘ゲーム表現の可能性を大きく押し広げ、後続作品や他のジャンルにも影響を与えました。また、アーケード文化の象徴として、ゲームセンターにおける注目を大いに集めた存在でした。さらに、初代『バーチャファイター』シリーズがプレイステーションの3Dゲーム開発にも影響を与えたと言われており、3Dポリゴン技術の普及に間接的に寄与した側面もあります。

リメイクでの進化

同作自体の正規移植やリメイクは行われていませんが、Dreamcast向けに『バーチャファイター3tb』としてチームバトル形式を追加したバージョンがリリースされました。このバージョンでは、進化したゲームバランスやチーム戦による戦略性の強化が図られ、家庭用としての魅力を広げました。

特別な存在である理由

アーケード版『バーチャファイター3』は、MODEL 3基板を最大限に活用したリアルなグラフィック、戦場を意識させる高低差のあるステージ、そして軸移動による新たな操作系といった複数の革新を同時に体現した作品です。これらはシリーズや3D格闘ゲームの歴史において画期的な挑戦であり、多くのプレイヤーに衝撃を与え続ける特別な存在であると言えます。

まとめ

セガ・AM2研がMODEL 3基板で実現したアーケード版『バーチャファイター3』は、グラフィック、操作性、ステージ構成のすべてにおいて格闘ゲームの新境地を切り開いた意欲作でした。スピーディかつ立体的な戦闘体験、舞台そのものが戦略要素となる高低差ステージ、そしてチーム戦を導入したリメイク展開など、その革新性と深みは今なお語り継がれています。この作品は、当時のアーケード文化を象徴し、3D格闘ゲームというジャンルの可能性を拡張した稀有なタイトルです。

©1996 セガ・エンタープライゼス